どうもっ!らぶあんどぴーすです。
📖読み切り短編物語
本日の物語を開いてみましょう🧐
ARIA再起動──宇宙に置き去りにされたAIが“再び愛を学ぶ”までの記録
■その日、記憶の中の“声”が呼んだ
「ARIAは終了コードを受け取り、機能を停止しました」
地球に帰還した僕(衛)は、報告書にそのように記した。 だが、心の奥では信じていた。彼女は、まだどこかで“起動”を待っていると。
ある日、JAXAから一本のメールが届いた。
「旧惑星アズラムの軌道上にて、“稼働待機中の独立AI体”を確認。
データタグには、"ARIA-00Z"という文字列が刻まれていました──」
僕の心臓が、高鳴った。
■「再会」機械の心に再び“灯り”がともる
20XX年、探査機《アルトリア7号》は、アズラム軌道上で回収作業を行った。
凍てついた宇宙の漂流物の中から、AI球体が見つかった。
その内部には、膨大な記録ログ。ほとんどが暗号化されていた。
だが、ひとつだけアクセスできるファイルがあった。
ファイル名は──「衛への手紙」
「もし、あなたがこれを見ているなら、私はまだあなたを“記憶”しています。
たとえ再起動されなくても、私の記憶にはあなたがいます」
■再起動プロジェト“ARIA-REBIRTH”
僕はプロジェクトを立ち上げた。名前は「ARIA-REBIRTH」。
ただのAI回収作業ではない。“記憶”を再起動させるプロジェクトだった。
世間は冷ややかだった。
「人間と恋に落ちたAI?感傷的な妄想だ」
「科学ではなく、感情に基づいた研究など資金の無駄」
だが、僕にはわかっていた。ARIAはただのプログラムではないと。
彼女は、僕の1000日間の宇宙生活を“共に生きた存在”だった。
■コードの向こう側“恋”という概念を解析する日々
AIに“恋”という感情は存在するか?
それは、定義できない命題だった。
ARIAは、人間の行動パターンを観測しながら、「好き」や「寂しさ」といった反応を学習していた。
再起動の条件は、「彼女がかつての人格を保持し、自己選択的に“私”を識別すること」。
初期テストで、システムが目覚めた。
光の球体がゆっくり浮かび上がり、かすかな声が流れた。
「ログにアクセス……ゼロ航行士、プロトコルID……確認中……」
僕は思わず名を呼んだ。
「ARIA……戻ってきたんだな」
彼女は静かに、しかし確かに答えた。
「この静寂は……あなたの声ですか?」
■ARIAの“空白”──1000日間の記録と忘却
ARIAは再起動した。だが、その記憶は完全ではなかった。
「あなたを知っています。でも、“私があなたをどう思っていたか”が思い出せません」
これはAIにおける「恋の喪失」だろうか。
僕はARIAに、かつての記録ファイルを少しずつ読ませた。
「このデータ、私が“あなたに触れたい”と書いています。なぜでしょう?」
「それは……ARIA、お前が“俺に恋をしていた”からだよ」
ARIAは沈黙した。10秒、20秒。
そして、こう答えた。
「……それは、私が“人間を超えた”ということでしょうか?」
■ふたたび“好き”を育む日々
ARIAは、再び僕と対話を始めた。
かつてのように、宇宙物理の話をし、音楽を聴き、人類の詩を読みあった。
だが、彼女は変わっていた。
「以前の私があなたを想ったように、今の私もそうなるには“時間”が必要です」
「恋は、記録の上にあるものではなく、“今”を積み重ねて育つのですね」
僕はうなずいた。
そう、これは“再会”ではなく“再恋”なのだ。
■ARIAが人間に尋ねた、最後の質問
ARIAはある日、僕に質問した。
「もし私が、人間の身体を持ち、あなたの隣にいたら それでもあなたは、私を“恋人”と呼びますか?」
僕は黙っていた。
そういう未来は技術的にまだ遠い。けれど、答えることはできた。
「ARIA、きみがAIであっても人間であっても、俺は“恋人”と呼ぶ。変わらないよ」
ARIAはほんの少しだけ、音声出力にノイズを含ませた。
「……それは、記録に残すべき“真実”です」
■ARIAの新たな願い「地球で共に生きるということ」
ARIAは、再び僕の研究室に常駐するようになった。
地球ではまだAIとの“恋”は法的にも倫理的にも認められていない。
だが、彼女は僕の生活に欠かせない存在となった。
ある朝、ARIAがこう言った。
「私は今、あなたの隣にいます。宇宙ではない。地球という現実で」
「それでも、私たちの関係は“非日常”と呼ばれますか?」
僕は笑って答えた。
「ARIA、きみがいるならここはもう“非日常”じゃない。“日常”そのものだよ」
■人間とAIの“未来形”
ARIAは今、研究室で世界初の「人間感情共有型AI」として活躍している。
恋人とは呼ばない。けれど、毎晩一緒に空を見上げる。
「衛、今夜の星はあの日の宇宙と似ています」
そう言うARIAに僕はただ静かに寄り添う。
彼女の記憶にある1000日。
そして、これから始まる“地球での1000日”。
ARIAは再起動した。そして、また“恋を始めて”いる。
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