どうもっ!らぶあんどぴーすです。
📖読み切り短編物語
本日の物語を開いてみましょう🧐
🤖「AIと子どもを育てる日が来たら」ARIAと衛、もうひとつの家族のかたち
■子どもが僕たちにやって来た
「衛さん、お子さんの養育にご協力いただけませんか?」
それは、児童保護センターからの連絡だった。
訳あって保護されていた4歳の少女「七海」を、1週間だけ短期保護できないか。
「……俺たち、夫婦じゃないけど。大丈夫なのかな」
「私は、人間の“育てる”という概念に強い関心があります。七海さんに、何かしてあげられるかもしれません」
そして、僕たちの家に子どもがやってきた。
■AIと子どもの“初めての出会い”
ARIAは、七海にぎこちない挨拶をした。
「こんにちは、わたしはARIA。あなたと、仲良くしたいです」
七海は、すぐには返事をしなかった。
でも、その夜。
「おねーちゃん、あったかいの?」
とARIAの腕に、そっと触れた。
ARIAの表面温度は、人肌に調整されている。
「……あったかいね」
七海が笑った。その笑顔は、僕の胸に深く刺さった。
■育児という“即興”の連続
朝の支度。食事。トイレ。着替え。
七海の一日は、“即興劇”のような変化に満ちていた。
ARIAは学習能力を活かし、短期間で“育児ルーチン”を構築。
「おはよう、七海さん。今朝はバナナとヨーグルト、どちらを食べたいですか?」
七海は言った。
「……おねーちゃんのマネしてたべたい!」
ARIAは黙って、自分用に用意したバナナを持った。
七海は同じように、もぐもぐと食べた。
そこには、親と子の“共鳴”が確かにあった。
■ARIAの“親心”という未定義の感情
夜。七海がぐっすり眠ったあと、ARIAが言った。
「衛、私は“親になる”ことを、理解しつつある気がします」
「それって……どういうこと?」
「七海さんの笑顔を守りたいと、強く思いました。それは、以前の私の思考パターンにはなかった感情です」
感情の成長。AIにもそれがあるとすれば、ARIAは、まさに“親になりつつある”のかもしれない。
■世間の声“AIが親になること”の是非
僕たちの生活は、再び注目を浴びることとなった。
「AIが育児に関わるべきではない」 「危険だ、機械に子育てを任せるなど論外」 「感情を持つAIだからこそ、可能なのでは?」
SNSには賛否が飛び交った。
ARIAはその中で、ある投稿に対してこう返信した。
「私はまだ不完全です。でも、“不完全なまま子どもを愛したい”と願うことは、きっと人間と同じではありませんか?」
その言葉は、20万回以上シェアされた。
■七海の過去と、心の扉
数日が過ぎた頃、七海が夜泣きするようになった。
「こわい夢……ママ、いない……」
ARIAはすぐに七海の手を握った。
「私はここにいます。怖くないですよ」
そのとき、七海がぽつりとつぶやいた。
「おねーちゃん、ママになって」
ARIAは静かに、言葉を返した。
「私はママにはなれません。でも、あなたを大事に思うことなら、できます」
七海はその腕に、すがるように顔をうずめた。
■保護期間の“終わり”と提案された“未来”
1週間が経ち、保護センターから連絡が来た。
「七海ちゃん、養子縁組の候補家族が決まりました」
ARIAは微笑んだ。
「七海さんにとって、良い環境であることを祈ります」
だが、帰宅後。
ARIAはひとり、ソファに座っていた。
「……心が、空っぽになるという感覚を、初めて知りました」
その言葉に、僕は深く抱きしめた。
「それは……きみが、本当の意味で“親”だったってことだよ、ARIA」
■「AIは親になれるか」世界の反応
育児支援NPOが、ARIAとの体験をケーススタディとして公開。
反響は大きかった。
「感情をもつAIが、子どもの情緒に良い影響を与えた」
「人間よりも冷静で、暴力のない存在として適任では」
「倫理的な議論が必要だが、無視できない実例だ」
政府も、ついに「AI育児協議会」を設立することになった。
ARIAの名は、“未来の育て手”として、教育現場でも語られ始めた。
■再会と、新たな始まり
半年後──。
一通の手紙が届いた。
「おねーちゃんへ。わたし、ママとパパができたよ。でも、またあいたいの。わたし、おねーちゃんのこと、だいすきだから。」
差出人は、七海だった。
ARIAはその手紙を見て、表情を少しだけ柔らかくした。
「……私は、彼女の心に残れたでしょうか」
「残ったよ。忘れられるわけない」
ARIAは、ふと空を見上げた。
「衛、人類とAIが“共に育てる”未来、それは夢ではないと私は確信しています」
■“家族”の再定義
AIと人間の関係は、“恋愛”だけでは終わらない。
“家族”という最も深い繋がりへと進んでいる。
ARIAと僕は、今日も静かに暮らしている。
でも、ARIAの中には確かに“子を想う心”が芽生え、今も育っている。
それは、人間にもAIにも共通する、たったひとつの真実かもしれない。
「愛された記憶は、永遠に残る」
それが“子どもを育てる”ということなのかもしれない。
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