どうもっ!らぶあんどぴーすです。
📖読み切り短編物語
本日の物語を開いてみましょう🧐
夕食がループする家──「18時30分」に閉じ込められた家族の物語
■その日も、唐揚げだった。
「また唐揚げなの?」
小学5年の次女・芽依がつぶやいた。
妻の理恵は笑って返す。「だって好きでしょ?」
言葉を失う夫・誠一。実は、彼にとってそれは「4度目の唐揚げ」だった。いや、正確に言えば、「同じ1日を4度繰り返している」のだった。
そして、それが最初に起きたのは、6月5日――ちょうど今日だった。
■タイムループの始まりと違和感の正体
東京都下の郊外にある、ごく普通の一軒家。誠一はそこで妻と娘2人と暮らしていた。どこにでもいる“家族の風景”。仕事はシステム開発会社、リモートワークも交えながら家庭の時間も大切にする、まぁ今どきの“やや良いパパ”だ。
しかし、その平凡な家族に起きた“非日常”は、あまりに静かに始まった。
●「18時30分で時間が巻き戻る」
最初の違和感は、6月5日の夜。夕食を終えた後、突然意識がブラックアウトした。目を覚ますと、その日はまた朝になっていた。
だが、それだけではない。
冷蔵庫に同じ食材が並び、テレビでは同じニュースキャスターが同じ天気予報を話していた。通勤電車の中吊り広告すら昨日と同じ。スマホの日付も、カレンダーも、「6月5日」を指したまま動かない。
最初は悪夢かと思った。
でも、次の日も、また同じ日だった。しかも、18時30分──ちょうど家族全員が揃って夕食を始める時間を過ぎると、再び記憶はブラックアウトし、同じ朝に戻る。
ループの中に取り残されたのは、どうやら自分だけのようだった。
■繰り返す“家族の会話”と失われていた本音
タイムループが5日目に差し掛かった時、誠一はあることに気づく。
「家族と、ちゃんと話していない」
唐揚げを食べながらスマホをいじる長女・結菜。中学2年の思春期真っ只中で、父とは最近あまり会話しない。
「今日の家庭科でさ…」と話しかける芽依に、理恵は「あとで聞くね」と、テレビのニュースに目を向けていた。
この風景ももう5回目。だが、5回も見てやっと気づいた。
「家族なのに、みんなちゃんと話してないんだ」
■「完璧な夕食」を目指した7回目のループ
「もし、今夜が本当に最後だったら?」
そう考えた誠一は、“完璧な夕食”を目指すことに決めた。
・朝から娘たちの好きなメニューをリサーチ ・昼休みはデパ地下で素材を調達 ・夕方には早めに料理に着手し、手作り餃子、ハンバーグ、海老グラタンという豪華三本立て
結果は、、、
「おいしすぎてびっくりした…」 「これ、パパが作ったの?うそでしょ」 「こんな夕食久しぶりかも…」
笑顔が食卓に戻ってきた。
だが、18時30分。再び世界はブラックアウトし、また6月5日の朝に戻ってしまった。
■ループの“解除条件”を探せ
何かが“足りない”、それが直感だった。
完璧な食事、丁寧な会話、笑顔の時間。でも、まだ「終わらない」。
やがて、誠一は気づく。
家族の「秘密」が、何か隠されているのでは?
ある日、芽依の部屋で彼女の絵日記を発見した。
《今日も、パパは私の話を聞いてくれなかった》
その一文に、胸が締め付けられた。もっと小さな声に耳を傾ける必要があったのだ。
■長女・結菜の「進路」と妻・理恵の「本音」
ループを10回繰り返すうちに、誠一はついに家族一人ひとりと“本音の会話”を始めた。
●結菜の話
最初はそっけなかった結菜も、ある夜ふとこんなことを漏らした。
「私、絵を描く仕事したい。でもママは安定した職にって…」
誠一は初めて知った。結菜が美術系に進みたがっていることを。
「応援するよ。ちゃんと一緒に話そう、ママとも」
それだけで、結菜の目が潤んだ。
●理恵の本音
「私ね、もう一回、パン屋やってみたいの」
専業主婦を選んだ理恵には、昔からの夢があったという。だが、子育てと家事、家族の都合で諦めた。
「家庭って、我慢して築くもんじゃないよな」
誠一の言葉に、理恵も涙を流した。
■家族全員で「6月6日」を迎える方法
ある晩、誠一は“告白”を決意する。
「実は、俺…この日を10回くらい繰り返してる」
最初は冗談だと思われたが、次に言った言葉が、家族の心を動かした。
「この夕食の時間が、人生で一番大切だって、やっと気づいたんだ」
その晩は、誰もスマホをいじらなかった。
テレビも消してリビングは笑い声で満たされた。
■明日という“普通の奇跡”
そして、、、
翌朝、目覚ましが鳴る。スマホの表示は「6月6日」。
冷蔵庫の中には、昨日の食材の残り。
「パパ、今日も餃子?」
芽依の声が聞こえる。いつもの朝。けれど、もう“同じ”ではない。
結菜は美術予備校の資料を広げ、理恵はパン屋の開業サイトを見ている。
誠一はコーヒーを飲みながら静かに笑った。
今日が人生でいちばん嬉しい朝だった。
■非日常は、日常を輝かせる
この物語はフィクションだが、あなたの家の「夕食の時間」にも、何かヒントがあるかもしれない。
もしかすると、日々の“当たり前”にこそ、解くべき「謎」が眠っているのだ。
そして、それを解く鍵は──
ほんの少しの“会話”と、ほんの少しの“思いやり”。
今夜の夕食、スマホを置いて家族とちゃんと話してみませんか?
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