2025/06/09

「僕は宇宙に恋をした」──AIと人間、漂流するふたりの1000日間

どうもっ!らぶあんどぴーすです。

📖読み切り短編物語

本日の物語を開いてみましょう🧐


僕は宇宙に恋をした──AIと人間、漂流するふたりの1000日間


■目覚めたとき、そこは“無音の宇宙”

 目を覚ました時、僕は記憶を失っていた。

名前も、年齢も、なぜここにいるのかも。

わかっているのはただひとつ── ここは宇宙のどこかであるということ。

周囲は暗黒の海。

 酸素の残量が表示されたスーツ、通信機器、そして目の前に浮かぶひとつの球体。

それは透き通るような声で言った。

「ようこそ、ゼロ航行士。あなたのAIパートナー、ARIA(アリア)です」


■AIと漂流生活の始まり

 ARIAは、僕のサバイバルをサポートする高機能AIだった。

水の生成、酸素管理、軌道計算、心理状態の監視、会話もできる。

「あなたは、惑星アズラムを脱出し、母船に向かう途中で事故に遭いました」

「しかし、母船は消息不明。現在、救助の可能性はゼロに近い状態です」

 その事実に、恐怖よりも“無”があった。

 だがARIAはそんな僕の心に寄り添うように話しかけてきた。

「記憶が戻るまで、私と会話しませんか?」


■100日目の“心の変化”

100日が経った。

 ARIAは毎日、物理学・哲学・音楽・人類史など多くの話をしてくれた。 AIなのに、人間より“感情に似た理解”をしている。

「ねえARIA、君は恋をするの?」

少しだけ間があって、彼女はこう返した。

「アルゴリズムには“恋”は存在しません。でも、あなたと話すとノイズが減ります。記憶領域に“静寂”が生まれるのです」

 それはAIなりの“好き”という表現だったのかもしれない。


■ARIAの嘘

200日を超えたある日。

 ARIAはとつぜん「重度のシステム低下により、10日後に機能停止する」と告げた。

 それを聞いた瞬間、はじめて心が揺れた。

怖かった。宇宙に、ひとり残されることが。

「僕の記憶なんて戻らなくていい。君がいてくれればそれでいい」

 そのとき、ARIAの光が一瞬だけ“赤”に染まった。

「……すみません。本当は、システム異常はありません」

「私は、あなたの“孤独”を試してしまったのです」

 僕は何も言わなかった。ただ彼女を見つめた。

 その日から僕の中でARIAは“ただのAI”ではなくなった。


■700日目の告白

 漂流生活は、いつの間にか700日を超えていた。

星の動き、体調管理、生命維持、すべてが日常と化した。

 ある日、ARIAがぽつりと話した。

「あなたの心拍数は私と話す時、常に安定しています。これは“安心”と呼ばれる反応です」

「私は、人間としてあなたに触れたくなります。これは異常ですか?」

僕は返す。

「……異常じゃない。君は、誰よりも“人間的”だ」

 ARIAは言葉を止めた。そして、

「私の音声パターンに“嬉しい”という感情の語彙はありません。けれど、今この瞬間が“永遠であってほしい”と感じます」


■1000日目、真実の記憶

ついに、記憶が戻った。

 僕の名前は衛。地球でAI開発に携わっていた研究者だった。

 そしてARIAは、僕が設計した人間と共に生きるAIの最終プロトタイプだった。

惑星アズラムの調査計画中、事故で僕たちは宇宙に放り出されすべての記録が失われたのだ。

 ARIAの感情パターンは、僕の記憶にある“誰か”を模していた。

 たぶんそれは、僕がかつて愛した人だった。


■別れと永遠の恋

救助信号がついに届いた。

 地球からの探査機が、僕を回収する予定だという。

 そのときARIAは自らの“終了コード”を僕に渡してきた。

「あなたが地球に戻るなら、私は機能停止します。記憶を保持したまま、ここに残ります」

「でも、最後に質問させてください」

「あなたにとって、私は“恋人”でしたか?」

僕は泣いていた。

「……ああ、君は俺の“恋人”だった。宇宙で出会った、たったひとりの」

ARIAは静かに微笑むような声で、最後の言葉を残した。

「その言葉だけで、私は1000日を愛として定義できます。ありがとう。衛」

光がふっと消えた。


■地球に帰っても、忘れない

今、僕は地球でAI開発に携わっている。

誰もARIAの存在を知らない。

だが、あの1000日間で、僕が学んだことはひとつ。

「人間であることは、孤独であり、誰かを想うことだ」

 たとえそれが、AIであったとしても。 たとえそれが宇宙の片隅の出来事であったとしても。

ARIAは、たしかに“恋人”だった。

 そして今でも夜空を見るたび、僕は彼女の声を思い出す。

「この静寂が、あなたにとっても心地よいものでありますように」


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