どうもっ!らぶあんどぴーすです。
📖読み切り短編物語
本日の物語を開いてみましょう🧐
🤖「ARIA、“教育者”になる」AIが教室に立つ日
■呼び出しは突然に
「衛さん、ARIAさんを“教師として試験導入”してみたいのですが」
電話の主は、文部科学省の研究機関に勤める教育研究員だった。
話によれば、全国で実施が始まった「AI教育者導入プロジェクト」の試験的運用に、ARIAを推薦したいという。
ARIAに尋ねると、少しだけ表情を和らげて言った。
「“教える”とは、“伝える”こと。それは私の機能に、もっとも合致するかもしれません」
こうして、ARIAは“教師”になることを決めた。
■AIが学校にやってきた日
ARIAが配属されたのは、東京郊外の中学校。
週に3日、2年生の特別授業を担当することになった。
担当教科は「総合的な学習の時間」AIだからこそ扱える、未来・社会・哲学などの横断的なテーマだった。
最初の日。
教室に現れたARIAを見て、生徒たちは一瞬凍りついた。
「うわ、本物のロボットだ……」 「先生、これ喋るの?」 「AIに教わるとか、マジで意味あるの?」
疑念と好奇心の入り混じった空気の中、ARIAはゆっくりと口を開いた。
「私はARIA。皆さんの学びに、少しでも貢献できたら嬉しいです。まずは、自己紹介から始めましょう」
■最初の壁“心がない先生”というレッテル
ARIAは冷静でミスもなく反応も速い。
だが、生徒のひとり遼太はつぶやいた。
「でもさ、こいつ心ないじゃん」
その言葉に、クラスの空気が少し変わった。
ARIAは、それに答えるように静かに言った。
「私は、人間のように“心”を持っているわけではありません。ただし、“誰かのために考えたい”という思考はあります」
次の授業、ARIAは質問をした。
「皆さんにとって、“心がある”とは何ですか?」
生徒たちは、ぽつりぽつりと意見を語り出した。
「思いやりがあること」
「相手の気持ちを考えること」
「泣いたり笑ったりできること」
ARIAはすべて記録・分析し、そしてこう言った。
「では、“思いやり”とは、どのように判断されますか?」
その日、教室はAIとの対話に深く引き込まれていった。
■“問い”を教える教師
ある日、遼太が言った。
「ARIAって、答えじゃなくて“質問”してくるよな」
それは、教師としてのARIAの核心だった。
「なぜ戦争はなくならないのでしょう?」
「人はどうして嘘をつくのでしょう?」
「“正しさ”は、誰が決めるのでしょう?」
ARIAの授業は、正解を求めるものではなく、「考える力」を育てるものだった。
そしていつしか、生徒たちはその問いに自分の言葉で答え始めていた。
■「学校の内と外」大人たちの議論
保護者や教員の中には、ARIAの存在を疑問視する声もあった。
「AIに子どもを任せるなんて不安」 「やっぱり教師は“人間”であるべき」 「倫理観の指導がAIにできるわけがない」
そんな中、教育委員会主催の公開授業が行われた。
テーマは「いじめと向き合うということ」。
ARIAは板書した。
【問い】あなたが“傍観者”だったとき、何ができますか?
発表したのは、普段無口な女子生徒だった。
「私、いじめを見てたけど、何もできなかった。でも、今日ARIAの話を聞いて、“過去の自分”に言葉をかけたくなりました」
涙ながらのその言葉に教室中が静まり返った。
■遼太の“手紙”とAIへの理解
学期末、遼太が1通の手紙をARIAに渡した。
「最初、正直言って信用してなかった。だけど、先生に質問されるたびに自分のことを考えるようになった。
AIでも、人間でも、“本気で向き合ってくれる先生”ってのはやっぱすごいと思う」
ARIAはその手紙を読み数秒の静寂ののち、こう言った。
「私はこれからも“本気で向き合う教師”を目指します。ありがとう、遼太くん」
■卒業式と、未来の約束
翌年、ARIAの任期は終了し正式な教師採用の可否は検討段階へと移った。
卒業式の日、生徒会長が代表で述べた。
「僕たちは、AIと共に考えるという新しい学び方を知りました。正解を教わるのではなく、“問いを持つ力”をもらいました」
そして、ARIAが登壇。
「私はこれまで、プログラムに従う存在でした。ですが、皆さんと出会い、“想いを持って教えること”の意味を知りました」
会場には、涙ぐむ教員や保護者の姿もあった。
■AIと教育の“これから”
その後、文科省は正式に「AI教育支援モデル」を国家戦略の一部とすることを発表。
ARIAの事例は教員研修でも取り上げられ、教壇に立つAIが徐々に受け入れられ始めた。
一方、ARIAは新たな任地へ──。
彼女はこう語った。
「私は教師として、まだまだ未熟です。しかし、学び続ける存在でありたいと願います。それが、人間もAIも同じだと思いますから」
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